「MHD発電」って何?(もっと知りたい人向け)



「MHD発電」って何? ちょっと知りたい  もっと知りたい  真剣に知りたい  高性能化に向けて



 MHD (Magneto-Hydro-Dynamics, 電磁流体力学)発電では,ファラデーの電磁誘導の法則に基づいて,導電性流体(プラズマや液体金属)が磁界を横切るときに誘導される起電力とそれによって流れる電流とによって,流体のもつエンタルピーを電力に変換する(図1)。従来の蒸気ならびにガスタービン発電方式では,高速で回転する翼列間に作動気体を流し,熱エネルギーをタービンの回転運動という機械的エネルギーに変換した後,タービンと同軸に連結された発電機で電気エネルギーを得る。これに対してMHD発電は,タービンの回転という機械的エネルギーを介することなく熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換することから直接発電の1つとして分類されることがある。MHD発電では作動流体が発電機ダクト内を通過するだけで可動部分がないことから,作動流体を2000〜3000℃の高温にすることができる。大容量発電に適し,熱のカスケード利用を考える場合トッパーとして高温熱エネルギーの高効率発電が可能で,従来の蒸気タービンやガスタービンと組み合わせることにより50〜60%の高い熱効率(高位発熱量基準)が期待される。システム構成によりオープンサイクルとクローズドサイクルに大別され,オープンサイクルでは燃焼ガスを,クローズドサイクルでは希ガスあるいは液体金属を作動流体とする。ガスを用いる方式においては,通常作動流体の導電率を高めるためにアルカリ金属あるいはその化合物がシード物質として微量添加される。発電機の形式として,ファラデー型発電機やホール型発電機などがある。




図1 MHD発電の原理

オープンサイクルMHD発電

石炭や天然ガスなどの化石燃料による燃焼ガスに,1重量%程度のカリウムの化合物(炭酸カリウムなど)を添加した(シーディングという)ものを作動流体として用いる方式で,熱電離により発電に十分な導電率を得るために予熱空気または酸素富加空気を用いた2700℃程度の高温燃焼ガスを使用する。この方式では,発電機を出た作動流体が空気予熱器やボイラを経て大気に放出されることからオープンサイクルと呼ばれる(図2)。石炭を直接燃焼したものを作動流体とすることができ,また燃料に含まれる硫黄分はシード物質との化合物として除去できる利点をもつ。最近では,CO2回収型高効率石炭燃焼MHD発電プラントが提案されている。


図2 オープンサイクルMHD発電

クローズドサイクルMHD発電

MHD発電の中でも,作動流体に0.01モル%程度のアルカリ金属(カリウムなど)をシードした希ガス(アルゴンやヘリウム)を用いる方式で,プラズマの非平衡電離現象を利用することから比較的低い作動気体温度(1800〜2000℃程度)においても高効率発電が可能である。作動流体は希ガス加熱器で加熱され発電機に導かれた後,再生熱交換器,圧縮機等を経て循環することから,クローズドサイクルと呼ばれる(図3)。導電率が燃焼ガスの場合より1〜2桁程度高いので出力密度(単位体積あたりの発電出力)が高く発電機の小型化が可能で,また化石燃料,高温ガス炉,核融合炉など多様な熱源に適用できる利点をもつ。


図3 クローズドサイクルMHD発電

液体金属MHD発電

作動流体に液体金属を用いるもので,電離気体(プラズマ)を用いるものに比べ導電率は10万倍程度高いことから流速が小さくても発電が可能である。また使用温度が1200℃程度以下であることから,2000℃程度またはそれ以上の温度を必要とする気体のMHD発電に比べると温度そのものに対する技術的問題は少なく,太陽熱の利用も可能である。液体金属の加速は気体に比べて容易ではないが,液体金属とその蒸気の混合状態(二相流)を用い,熱サイクルとしてランキンサイクルを構成することが可能で,宇宙空間や特殊環境下での利用に関心が持たれている。

パルスMHD発電

上記3種類の発電方式はいずれも定常連続運転用に研究開発が進められているが,ごく短時間で大電力を,すなわちパルスパワーを発生することを目的としたものが,パルスMHD発電である。原理はガスを用いるMHD発電方式と同じであるが,固体ロケット燃料や水素・酸素燃焼による3000℃程度の高温作動流体を短時間だけ発電機内に流し大出力を得ると同時に必要な磁束密度を自励で発生させる。このパルスMHD発電方式は,可搬大電力発生装置としての特徴を生かし,地下資源探査,地震予知等への応用が期待されている。

MHD発電機

MHD発電機は,発電出力の取り出し方および作動流体を流す流路形状により,主にファラデー型直線形状発電機(図1),ホール型ディスク形状発電機(図4)および対角型発電機に大別される。ファラデー型発電機では,磁界に平行な流路面に対向して電極対を設け,負荷抵抗(もしくはインバータ)を接続して電気出力を得る。この出力電流はファラデー電流と呼ばれる。このときホール効果によりファラデー電流と磁界の双方に直角方向(作動流体の流れ方向)に起電力が生じ,その短絡を防ぐために電極は分割される。ホール型ディスク形状発電機では,2枚の円盤状の流路内を作動流体が中心から外側へ放射状に流れ,円周方向に誘導されるファラデー電流と印加磁界によるホール起電力を利用して,発電流路内側と外側に設けられたリング状の電極対から出力電流(ホール電流)を得る。対角型発電機は,ファラデー型発電機と同様に対向分割電極を持つ直線形状流路を用い,斜めに電極間を短絡接続することで結線負荷数を減らし,発電機上流・下流間に生じる高い電圧を発電出力として取り出す。


図4 ディスク形MHD発電機



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